初めて陶芸工房に訪れた時、職人さんに一番にお願いしたことでした。目が点になった職人さんの顔を今でも覚えています。
今や、北海道・北東北の縄文遺跡群が世界遺産に登録され、『縄文』が世界中に注目されていますが、私の中で縄文ブームが巻き起こったのは4年前。縄文土器との出会いです。
日常で使うはずの『鍋』や『器』に、機能性とは正反対のわざわざ使いにくいうねうねとした装飾や、手間も時間もかかる細かな溝がびっしりと刻まれている『土器』という存在を目の当たりにしたとき、背中で花火が打ち上がったかようなインパクトでした。
学校の教科書で描かれていたような、半裸で髭がボーボーの野蛮なヒトが、狩猟だけを生業に明日の生死を憂う過酷な生活をしていたら、こんなにすてきな土器が生まれるはずがないのです。
穏やかに生きているからこそアイデアが降り、心の豊かさゆえにユーモアが生まれ、豊富な知恵があるから創造の楽しみ方を知っているのです。縄文のイメージが完全に覆った瞬間でした。
それから一年後、移住した先でご縁があり冒頭のとおり。暇さえあれば陶芸工房に通う日々です。
「まずは粘土と友達になる」との師匠の教えに忠実に、手びねりをしたり、小物を作ったりしました。
太古・縄文の扉を開いたことが、現在の私の陶芸の道に繋がるきっかけになったのでした。
(次号に続く。)
【月刊DANASS No.215(2021年10月号)掲載】
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